プライド、最終話 完結12巻 感想
※ネタバレ注意です※
「プライド」最終話は感動する場面や、どきどきはらはらしてしまう場面など盛り沢山で本当に読みごたえがありました。
久しぶりに史緒、萌、蘭達の音楽ユニットSRMが集まるところから始まるのですが、最初に各々が出会った頃から、そしてグループを結成した当初から比べると本当に3人の関係が変わっているのがわかりました。
また3人共それぞれ自分の道を歩き始めているのだなあと感じました。
最初はお嬢様でプライドが高く孤独だった史緒、そのお嬢様育ちの史緒に対して敵対心ばかりの萌、それをはらはら見ているだけの情けない蘭。
そんな3人が、色々な出来事や壁にぶつかりながら、それを乗り越えお互いの気持ちや立場を理解しあえるようになったのには本当に感動しました。
SRMとしての最後のレコーディングが終わってそれぞれが帰途につく時、1人お腹の子をイタリアで育てる決心をした萌が史緒に「もう会えないけれどありがとう」と伝えた場面では胸に熱いものがこみ上げました。
萌は生まれ育った境遇もせいか最初はひねくれていて意地悪だったのですが、歌を歌う事を通してまたそれに関わる人達を通して、さらに思いもよらず授かったお腹の中の子供を通して変わっていったんですね。
史緒を人の気持ちが分からない高慢なお嬢様だったのが、父親の会社の倒産、初めての仕事、そしてやはり歌う事を通して変わっていったように思います。
史緒の婚約者である神野氏が史緒に萌のお腹の中の子の父親は自分だと告白してから話は急転直下します。
これには何もわざわざ話さなくても、それも結婚式の直前に話さなくてもと思いました。
しかし冷静沈着でビジネスライクだったこの人は、史緒の存在で変わっていったのだと思います。
だから隠したまま結婚したくなかったんでしょうね。
史緒は天と地がひっくり返ってしまったように動揺し悲しみますが、当然ですよね。この場面では本当にハラハラしました。
しかし最終的にはお互いが本当にわかりあう事が出来たので、この選択は間違いではなかったのだとほっとしました。
萌は萌で母親からお腹の子の父親の名を公表しろと迫られます。
この母親はいつ見ても自分の事しか考えないひどい親だと思っていたのですが、この人なりの萌に対する愛情があったようです。
父親がいないと萌とその子供がかつての自分達のように苦労するからと考えたからでした。
でもやはり周りの事を考えていないなあとつくづく感じました。
晴れて史緒と神野氏の結婚式が行われますが、その最中に地震が起きます。
そして萌と母親がいるお店が崩れてしまいます。
なんととっさに母親は萌(とそのお腹の子供)をかばい、「私だって何か1つはあんたのためになりたい」と建物のの下敷きになり死んでしまいます。
これにはとても感動し心が救われました。やはり自分勝手でも母親なんですね。
萌の命は自分の命より大切だったのです。本当に良かったです。
萌はやっと母親の愛情を心から感じることが出来たのですが、その直後母親はなくなってしまい、そのショックで産気づいてしまいます。
母親の死でパニックになっている上、自分の地震で頭部を負傷しているので、無事に出産できるのか緊張する場面の連続でした。
無理、私には産めないと弱気になる萌ですが、病院に駆け付けた史緒にはげまされ、無事に女の子を出産します。
しかし、ホッとしたのも束の間、萌は息を引き取ってしまいます。
これからなのに、何もかもこれからうまくいきそうなのにと、とても悔しさを感じました。
でも振り返ってみると萌の人生は短くても素晴らしいものだったのではと思いました。
逆境からのスタートですが誰にも頼らず、幾多の困難を乗り越え、大好きな歌の道で結果を残すことが出来ましたし、自分の愛した人(片思いですが)の子供をこの世に送り出せたのですから。
3年後、萌と神野氏の子供美恵ちゃんは史緒と神野氏2人の子として育てられています。
美恵ちゃんの3歳の誕生日に家族や元SRMの蘭、その周りの人達が集まるのですが、なぜか萌もその中にいるような気がしてなりませんでした。
きっとみんなの記憶の中で生きているからです。
史緒は歌う時にいつもそばに萌の声があるような気がするでしょうし、蘭もまたピアノを弾く時に萌の声を感じるはずです。
それぞれが自分の道を歩きだしている最後は、まるでこのお話の中に何度も出てくるオペラの舞台のラストのようでした。