神童、最終話 文庫 完結3巻 感想
※ネタバレ注意です※
この作品の最終話を読んで、こういうところに落ち着いたかというちょっとした寂しさや、ここからまた新たに始まるのだというポジティブな気持ちになりました。
ピアノの才能に恵まれた12歳の女の子が主役の物語で、鍵盤楽器を習っていたことがある私にとっても、実感としてわかるところが少しあるのですが、もちろん天才を描いた漫画なのでほとんどわからなかったです(笑)
こんなにたやすく指が動かせるのとか、楽譜を見ただけですぐに弾けるなんてずるい!なんてことをブツブツ言いながら読んでいました。
楽譜を読むことが得意な子も苦手な子もいますし(私は苦手だった)、1曲をマスターするスピードは人それぞれなのですが、クラシックの作曲家の楽譜を1度見ただけでぶっつけ本番だなんてすごすぎる・・なんてことを思いながら読んでいました。
それはともかく、とあるきっかけで大きなコンサートで弾く機会を得た主人公が実力を発揮し、世間で大ブレイクします。スターになった主人公はすごく忙しくなり国内外での演奏会に出演する立場になります。マネージメントを担当する母親が、娘のはなばなしい活躍を夢見てハードなスケジュールを組んだからです。
なくなった夫(主人公の父)が世界的な指揮者で、その名誉ふたたびという気持ちもあったのでしょう。
しかしそういう生活でストレスと疲労をためてしまったことが原因で、主人公はメニエール病になってしまいます。
そして両耳の聴力を失ってしまうのです。一度頂点を極めた子供が一気にどん底にたたきつけられるところが、読んでいてとてもつらかったです。
普段からビッグマウスでなまいきな態度をとっていた主人公なので、コンクールに出るようなレベルの他の子達(というよりその親達)はまったく同情せず、いい気味だと思っています。
この子達(というよりその親達)にとっては、目障りな存在が消えたということになるのです。
こういうところが現実的というか、こういうタイプの子に手をさしのべる人は決して多くないのかもと思いました。
確かに感じが悪い態度をとっていた主人公でしたが、再起不能と言われる状態になっても、それでネガティブな感情が消えるわけではないということもあるのです。
とはいえ主人公に協力する人達は少ないながらもいて、以前から主人公と親交がある人達が主人公のちからになろうと奔走します。
それがきっかけで、耳の聞こえない女性と、彼女が教える耳の聞こえない子供達と主人公は出会います。
主人公のピアノが大好きだというその女性や子供達との出会い、そこで今まで知らなかった音楽の”聴き方”を知るのです。
女性が言う(筆談で)「この子達にはこの子達の聴き方がある」という言葉に、音楽とは何かということを考えさせられました。
こういうふうに音を感じるのかと思って読んでいましたが、たぶん私が思うよりもっと深く音楽を理解しているのだと思います。
ここはぜひ原作の漫画を読んでみてほしいです。
ピアノを弾く気持ちになれなかった主人公が、この子供達を見てピアノをふたたび弾き始めます。
自分の耳では聴き取れない音を自分で奏でるのです。
主人公の頭の中では、音がしっかり響いているのだと思います。聴覚以外の感覚で音のささいなかげんがわかるのかもしれません。
最後の最後は主人公のソロコンサート、たぶん小さな会場で知り合いの人達を招いておこなわれます。
今後、主人公が再び世界の大舞台で弾く日がくるのか・・というのはいっさいわからないまま、この作品は終わります。
もしかして今までのようなピアノ漬けの生活ではなくなるかもしれません。
他のジャンプの勉強に興味が出て、そちらに進むかもしれないなんてことも想像します。そしてそれも悪いことではないと思うのです。