レベルE、最終話 完結3巻 感想
※ネタバレ注意です※
本作品は、主人公を中心とした短編的な話で構成されていた作品でした。
最終回は、周りを振り回し、いろいろしでかした問題の「王子」が、問題を一段落させた後、という形の所謂「数年後」の話が最終回となっています。
とても計算されていた作品で、ありとあらゆるところに小ネタが挟んであり、素晴らしい構成力の作品なのですが、あっさりとした最終回です。
作者は冨樫義博先生。「HUNTERXHUNTER」等、名作を生み出している作者ですが、彼の作品の最終回というのは、すごくあっさりしているものが多いと思います。
中の内容が濃すぎるからでしょうか?あっさりとしていて、そして、読後感がとてもいい。
それなのに、今まで出できたキャラクター達にさらっと触れ、こんなことがあったのかもな?と、想像を働かせてくれる演出がとても上手いのです。
このお話は、最終回になって「新キャラ」が出てきます。
そして、その新キャラがストーリーの続きを想像させるキャラクターでもあり、今まで、主人公こと「王子」がやらかしてきた事を、二重にも三重にも楽しませてくれる想像ができるような、最終回なのです。
「数年後」形式の最終話なので、いきなり脈略もないシーンで始まるのですが、そこに出てくるモンスター(にしか見えない生物)についても、結局主人公が関わっていたような、関わっていなかったような、そういうジョークの組み合わせが盛りだくさんなのです。
たった数ページの最終巻。コミックス自体も3巻しかありません。
それなのに、異常なボリュームを持った作品で、何百回でも読んでも飽きない!と私は思っています。
主人公は宇宙人であり、地球に対して……という、のがこの話の肝なのですが、最終回の宇宙人が地球に来た!というストーリーから考えると、なんとまとまった世界を作り上げているんだ!という衝撃も受けます。
個人的に、宇宙人が地球に来ても、こういう世界に収まったらいいんだ……と、いう感想を、はじめに読んでから十年以上経ちますが、抱いています。
ネタバレ的なお話になってしまうのですが、最終回では、問題児であった「王子」の子供が出てきます。
「王子」は悪魔的に天才的な頭脳を持ちながら、それを人を困らせる事に使い、楽しむというとても、ユニークなキャラクターなのですが、その娘も、血を引いているのか賢い。
その賢さというのが、たった1コマだけの表現で伝わるのです。
シリアスに見えるけれど、とてもギャグであり、とてもインテリジェンスであり、よくできた話であり、最終的に、ここまで平和を彷彿とさせるまとまりをみせるのかー!と、最後は、感動させられ、気付くと、1巻の1話を開いてしまうのです。
最終回、というのはさっぱりと終わったりして「あ、これで終わりなんだな」というものが多いと思うのですが、この作品の最終回はちょっと違う。
まるでスルメの様に「最終回、素晴らしかった」「さて、これは……もう一回読まねば」という感情が湧き上がるのです。
読後感が、もう一度読みたいにつながる作品というのは、そう多くないと思います。
ループしているわけではないのですが、噛みしめるごとに、発見や気づきや笑えるポイントが増え、どんどん楽しくなり、また訪れる最終回が、1度目に読んだときより、さらに感慨深くなっているのです。
「その後」を書いた最終回なので、もっと未来や続編も見たいという感想もでるのですが、それよりも、私はこの世界の事をまだわかっていないんじゃないか?作品を楽しみきれているのか?という状態になる、素晴らしい作品です。
こんな作品ほかにあるでしょうか!?と、是非オススメしたい。
涙あり、感動あり、という激しい感情やバトルもないので、まったりと読めるのもおすすめです。