Twin・地球、最終話 完結7巻 感想
※ネタバレ注意です※
双子の絆とは、こんなにも強いのかと思いました。
本来ならば、光地球で普通に暮らしていたはずの雷斗と伊恩ンです。
雷斗だけ闇地球に生まれ、様々な出来事を乗り越えて、やっと幸せになれる。
そう思った時に、まさか雷斗の目の前で伊恩が殺されてしまうなんて。
こんな事があって良いはずないんですっ。
ですが、お后様はたった一つだけ、伊恩を救う方法を教えてくれました。
それは、残っている伊恩の魂を雷斗の体に入れて、雷斗の魂を、新しく生まれる闇の体へと入れる事です。
伊恩は助かりますが、これで雷斗と伊恩は血の繋がりがある双子ではなくなるのです。
それどころか、雷斗に関する記憶も失われると。
光地球で関わった人の全てが雷斗の事を忘れてしまうのです。
それでも、雷斗は笑顔で答えるんです。
「喜んで今すぐ伊恩にあげる」
いくら双子の弟の為とはいえ、簡単に答えられるはずがない事です。
ですが、雷斗にとっては、伊恩が元気になれば、それで良いのです。
その雷斗の決心を周囲の人々は、とても複雑な想いで見つめました。
どれだけ辛くても、伊恩の為なら雷斗はどんな事でもいとわないのです。
目を閉じたままの伊恩に、「待っててね」と、優しく語りかける雷斗がとても切なく見えました。
ですが、雷斗にとっては何よりも辛い現実が待っていました。
それは、元気になった伊恩を見てはいないのです。
周囲の人々から、伊恩が元気になった事を聞かされても、それでも実際に自分の目で確認した訳ではありません。
雷斗の記憶は、伊恩が目の前で殺された瞬間の記憶で止まっているのです。
悪夢にうなされる雷斗。それは、雷斗にとって叶わない事を知らしめる夢でした。
元気になった伊恩には会えない。そして、二度と家族と笑って過ごす事が出来ない、夢。
雷斗は、その叶わない現実に毎夜のように涙を流しました。
そして、その事を知っているのは、雷斗の友人であるリステルだけでした。
そして、リステルは雷斗を激しく問い詰めます。
雷斗に、自分の思っている言葉を言ってみろと言われて、雷斗はやっと自分の心を解放しました。
「伊恩に、会いたい」
それは、思えば雷斗にとって初めての叫びだったように思います。
いつもは、どれだけ辛くても笑顔を浮かべていた雷斗です。
でも、リステルの腕の中で泣きながら雷斗に会いたいと叫ぶ雷斗は、とても幼く見えました。
そして、リステルのアドバイスにより、雷斗はもう一度、光地球へと向かいました。
自分の事を覚えていないと分かっていも、それでも雷斗は会いたかったのです。元気な伊恩の姿を。
ですが、分かってはいても、目の前を素通りする伊恩に、雷斗の心はどれだけ辛かった事でしょう。
ですが、やはり双子の絆は断ちきれないのだという事が分かりました。
伊恩は、雷斗の事を忘れてはいなかったのです。
ボロボロと大粒の涙をこぼす伊恩。
彼の魂は、ちゃんと雷斗の事を覚えていたのです。
戻った記憶に、伊恩は夢中で走りました。
伊恩にとっても、雷斗はかけがえのない存在なのです。
闇地球に戻ろうとする背中に、伊恩の、「行かないで!」という言葉が聞こえた瞬間は、まさに奇跡的に思えました。
互いの名前を呼び合いながらしっかりと抱き合う二人に、涙が止まりませんでした。
そして、伊恩は血の繋がりはなくても、雷斗は変わらずに双子の兄だと叫びました。
ずっと、兄でいて欲しいと。そして、雷斗もまた、伊恩を弟だと。
雷斗を迎えに来たリステル達も、その幸せそうな姿に心から喜んだのです。
雷斗は、どちらの世界からも愛された少年。
お后様の言う通り、雷斗は二つの地球に愛された少年なのだと思いました。
そして、雷斗と伊恩が再会した日は、二人の14回目の誕生日でもありました。
家族と共に誕生日を祝う事は、雷斗にとって、これほど幸せな事はなかったと思います。
辛い日々を過ごしてきた雷斗。
最後のページに書かれた言葉である、「雷斗 幸せに これからは笑顔がたえない位幸せになるんだよ」という言葉は、読んでいる全ての人の気持ちを代弁しているようでした。