石田リンネ先生/高瀬わか先生の連載作品「茉莉花官吏伝~後宮女官、気まぐれ皇帝に見初められ~」の最新話が読める月刊プリンセスは、毎月6日に発売です
同時配信の電子版が便利でオススメ!
もくじ
48話 11巻 プリンセス 2024年11月号
出版社 秋田書店/2024年10月4日 発売
お狐様の異類婚姻譚 / 1巻 -今だけ無料-
2022年12月13日まで
「嫁いできてくれ 雪緒」
「赤い花も白い花も みなやろう 目に映る花を残らず 雪緒の足元に敷いてやる」
ぴくっ
「だから」
「妻になれ」
「花の褥の上で 俺を旦那にしてくれ」
「なあ 雪緒 いいだろう? 俺を おまえのものに」
ごく…っ
くるっ
ぺこっ
「ごめんなさい」
『断った …断るだろう こんなの』
『だってこの方は 白月様は』
『私の「元夫」なんだから』
「ううん 手強い」
(手強くって当然じゃないかな)
むう…
『以前の白月様との結婚生活は わずか二か月で突然 終わったのだ』
『お見合い結婚だったため 恋や愛といった感情は存在せず それどころか会話すら ろくになかった』
『離縁して半年』
『なんの音沙汰もなかったのに いきなり呼び出されて再婚の申し込み…なんて』
(なぜ? としか…)
『話は 一年と数か月前に遡る――』
「私が お見合い?」
「そうだ」
「俺はあと月を三つ跨いだら 天昇するだろう?」
「そうなれば おまえは里で一人っきりになる」
(一人っきり…)
ぐ…っ
『翁の言う通り 私には他に家族がいない 翁は人の子である私を拾って 今まで娘同然に育ててくれた』
(その翁は 三か月後に天昇してしまう)
『「天昇」とは つまり「転生」のことで』
『老いた怪は一度滅し その後 天界で生まれ変わるのだという』
『怪にとっては おのれの格が上がることになるので』
『嘆いたり 忌避したりするものではないそうだけど…』
(私にとっては 翁との別れに違いない…)
しゅん
「あまり思いつめないでおくれ」
「少し時間はかかるやもしれんが きっとまた雪緒のもとに戻ってきてやる な?」
「無理だよ そういう嘘はいらない…」
「無理なもんか」
『翁はこう見えても 力溢れる古老の化生だ』
『その翁が天昇すれば 神に変ずる』
『神の位に駆け上がった者が 俗界たる里におりてくるはずがない』
(例え戻ってこれたとしても きっとその前に私の寿命が尽きてしまう…)
ぎゅ…っ
「俺だって寂しいぞ」
「雪緒を預かって もう十二年になるか」
「こんな俺に子育てなど できるものかと思ったが… 元気にすくすく育ってくれた」
「おまえには 日々の細やかな物事から薬草の扱い方 果てには 人にも使える妖術だって教えてやったなぁ…」
「雪緒」
「拾い子のまれ児であるおまえは 怪を舌なめずりさせるような よい匂いをいつも漂わせている」
「今後は 大きな怪の庇護のもとで暮らしたほうがいい」
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