バサラ 漫画、最終話 完結27巻 感想
※ネタバレ注意です※
BASARAの最終話は涙無くしては読み終えることができないストーリー展開です。26巻まで長い道のりでしたが、誰もが主人公の更紗と朱里が出会って惹かれ始めた頃から、いつかこの時がきてしまうのではないかと危惧していたことでもあります。
最終話の序盤に、まさかの主人公と読者の心の支え、永遠の名脇役である揚羽のピンチが描かれます。
どんな時も更紗のピンチを助け、自分の運命の女として守り続けた揚羽の最期はもう読み進められないのではないかと思うほど心に衝撃を与えました。
一度読み終えて、また最終巻の揚羽の部分を読んでももしかしてまだどこかで旅をしてくれているんじゃなかと思ってしまうほどです。
最終巻では、今まで主人公たちが心に秘めていた感情が溢れ出て表現されていきます。
更紗は朱里が赤の王と知ってしまった後でも本当に赤の王として仇を取りたいのか、朱里への愛情を失ってしまったのかと自問自答します。
朱里は、赤の王として自分がやってきたことが本当の正義であったのか、王族としてどうあるべきなのかについて自問自答します。
周りの更紗に近い存在であればあるほど、運命の少年として彼女が背負ってきたものと、家族を失った憎しみの感情を天秤にかけます。
この人々の葛藤がとても細かく描かれています。読んでいる方も感情移入してしまって、どうなってしまうんだろうかとドキドキが止まりません。
この最終話で印象的なシーンの一つは、赤の王と更紗の打ち合いのシーンで「更紗に戻して」と更紗が叫ぶシーンです。
ここにきて、やっと向かい合う赤の王とタタラが、ただの朱里と更紗に戻ります。
絵のタッチも、それまで修羅場をくぐり抜けてきた運命の少年としての姿ではなく、年相応の女の子らしいぷくっとした顔立ちに戻ります。
最後の最高に印象に残るシーンは、これまで一緒に戦ってきたメンバーが朱里と更紗を囲み守るシーンです。
運命の少年として、兄の死後、兄の身代わりとして全ての責任と重圧を背負って戦ってきた更紗は、「幸せはもっと遠くにあると思っていた」と呟きます。
このシーンが、最終話までの道のりの長さを走馬灯のように読者に蘇らせていきます。読者にとっては涙腺崩壊ポイントのクライマックスです。
そして、凪ファンには必見の見せ場シーンがすぐに訪れます。
今までずっとタタラとして接してきた更紗に「更紗」と呼びかけます。
もう運命の少年としてではなく、一人の少女の更紗として生きていくことを示唆しています。
更紗と朱里がお互いを愛する人を失うきっかけとなった仇同士と知ってからこの最終話までの流れが怒涛のようでした。
心のどこかで、少女漫画なんだから、最後はハッピーエンドなんでしょとたかをくくる中で、どんどんと主要キャラクターがピンチに陥っていってしまう展開に、最終話の最後の最後まで目を話すことができませんでした。
朱里の腕が一本失われてしまった時の衝撃と同じくらい、最後の打ち合いのシーンは「嘘でしょ。信じたくない。」と次のページが怖くてめくれなくなってしまうほどです。
最後まで引き込まれる作品でした。主人公同士の結末が最終話では最も重要なストーリー展開になります。
しかし、その横でいつまでもつかめいないキャラクターであった浅葱の成長も必見です。
自分はなんなのか、どうしたかったのか浅葱の独白シーンはその後の番外編を読んで行くと、またこの最終話に戻って読み返してみたくなります。
最終話は、ジェットコースターのようなストーリー展開であるだけではなく、また1話から読み返したいと思うほどの伏線回収をしています。
BASARAの最終話を読んだものとしては、まだこれを読んだことのない人にはぜひ手に取ってもらいたいと思いました。出版された時期が古いなど関係なく、名作だと思います。