こばと。、最終話 完結6巻 感想
※ネタバレ注意です※
ひとは亡くなります。
転生が約束されていても、やはりそれは同じひとだとは言えないでしょう。
自分とともに生きる事が、そのひとの幸せでないなら、悲しいけど、辛いけど、でも---そのひとが幸せでないよりはずっといいです。
花が舞い、晴れやかな満開の笑顔、美しいイラスト表紙からの最終巻です。
そんな綺麗で繊細なタッチのカラーイラストをめくって出てくるのが、最初に書かせてもらった台詞の抜粋---この巻で1番読者の方に伝わって欲しい「大好きな人の幸せの願い方=自分の願い」の象徴だと私は思っています。
この文章を読んでくださっている、貴方はどうですか?
好きな人はいますか?大好きな人はいますか?
そのひとと出会って、あなたは幸せですか?それとも、そうではありませんか?
もしかしたら中には、出会わなければよかった、と思う方もいらっしゃるかもしれません。周りのひとに、何か言われることもあるかもしれません。
でもその良し悪しを決めるのは、皆(まわり)ではなく、貴方(じぶん)自身です。
胸を張って、前を向いて、生きてください。貴方が望むのなら、そのひとのもとに行ってください。
この最終巻の見どころは、主人公「花戸 小鳩(はなと こばと)」が好きになったひと「藤本 清和(ふじもと きよかず)」のために、彼を幸せにしたいと願う自分のために、文字通り命を代償に願いを叶えるシーンです。
作者は有名なCLAMPさん。
本当に大好きな作家さんですが、とくにこの「こばと。」では繊細で美しい漫画で壮大なラブストーリーを見事に描ききっています。
小鳩を叱ってばかりいた相棒ぬいぐるみ「いおりょぎさん」は、実は異界のプリンスだったり、その恋人「水晶」という名の天使は、小鳩の病気を止めていたり……天界と異界、人間界などという難しいストーリーを含め、登場人物たちの微細な感情まで事細かく描写しています。
涙なしでは、見る事が出来ません。
最後、1番の願いを叶えた小鳩は逝ってしまいます。
関わった全てのひとの記憶から「花戸 小鳩」は消され、彼女は旅立ちました。
大好きです………さようなら。
時間の止まった神の領域の中で、告白する小鳩に号泣してしまいました。
---そして月日は流れ、16年後。
彼女は自分の中に眠る水晶の力もあり見事転生を果たし、高校生まで成長しました。
前世の記憶を持っていた彼女は、今まで自分がお世話になっていた保育園を探し、ついに見つけることが出来ましたが、誰も「花戸 小鳩」のことは覚えていないのです。
しかしそれでもいい、もう一度大好きなひとに会いたい、という思いから保育園でのアルバイト面接に向かった矢先でした。
なんと目の前、想い人の藤本さんが現れたのです。もちろん彼は小鳩のことを好きでしたが、その記憶もありません。
しかしその時、奇跡が起きたのです。
なんと藤本さんは、小鳩のことを思い出して、さらに「大好きだ」とら抱きしめるにまで至りました。
何故、藤本さんが記憶を取り戻したのか。
---そう願ってくれた者がいたのです。
「こばと嬢ちゃんと藤本がもう一回会えたら、消えた藤本の記憶を戻して欲しい」
その願い通り、藤本さんは記憶を取り戻し、そして小鳩もやっと藤本さんに「大好き」を伝えることが出来ました。
以上の文章を読んで、もしかするとありきたりなラブストーリーものでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、最終話にも関わらずキスすら描写がないのです。この現代に。
だからこそ現在(いま)こそ読んで欲しいのです。
彼氏が素っ気なくて寂しい、仕事ばかりでデートにも連れて行ってくれない、など思っている女性は少なくないと思います。
大好きなひとと一緒に居たいという気持ちは大切です。
でもそれ以上に、大好きなひとには幸せでいて欲しいと思いませんか?
最後に質問です。
貴方の願いは、何ですか?
大切な感情や、ひたむきな生き方、誰かを想いやる大事な気持ち………そんな「ひとの素敵な部分」を思い出させてくれる最終話でした。