主人公の女の子は、現役女子高校生でスポーツ(陸上の短距離)の時以外は3年寝太郎みたいになっちゃう素朴な女の子です。
何の変哲もない毎日にちょっと飽きていたりして窓の外を見ていたりします。
彼女には、理系天才肌のおとなしめの弟がいるのですがある日、弟の尊が自力で発明したタイムマシーンを主人公の唯が間違えて起動してしまい、戦国時代の戦いのさなかに入り込んでしまい帰れなくなってしまうのです。
そこで、偶然出会った若君の忠清(羽木家嫡男)に一目惚れしてしまいます。
まさに運命の出会いというか、いっきに女の子らしくなる唯ちゃんがとてもかわいらしいです。
美しい絵巻を見たかのように瞳も心も奪われて見つめてしまいます。
いきがかりじょう、男装の麗人(ではないのですが)やむをえず男の子のふりをしつつ内心すごい勢いでときめいている彼女、とってもキュートなハートの持ち主です。
でも、かわいいだけでは終わらないのが唯の良い所です。若君を守るために自慢の脚力を駆使して、度胸満点の活躍をしていくことになります。
ストーリー展開も淀みなく展開し、かなり頻繁に危機が訪れるのでドキドキワクワクしながら読んでいるとあっという間です。
印象に残った場面は、当初、身分の差から日常的に若様に会えなくなり何とか若様に近づきたくて戦に行く決意をする唯の勇気と恋する気持ちの強さです。この強さは物語の初めからずっと脈打っていきます。
普通なら諦めるとか、常識的にとか、容姿がふさわしくないかもとかうじうじくよくよしがちなのですが、唯は一瞬しか、いや一瞬も迷わないときさえあるのです。
それは、自分の事より若君の命を守りたい(敵は若様を手にかけようと狙ってくるので)という気持ちです。自分は敵に捕らわれても、敵地に一人で囮になっても若君が幸せになれたらいいやと16歳ながら真剣に考えて行動します。
今も昔も恋する気持ちに変わりはないのだなと感じます。現在は何で戦もなく恵まれているのに人も恋も愛も不自由そうなのだろうとも思います。
さて、忠清も途中から唯が女の子だと気付き、それとなく無理しないように守ってくれたりします。
彼は、姿だけではなく家臣や身の回りの人への優しさや、品の良さが伝わってくる若君です。
そしていつしか、お互いが気になるようになってきますが、表面上はややクールで、時々ドッキンとするようなシーンもちりばめられています。
例えば、若君を癒すために地元の有力者の娘が寝所に侍ることになると知り、唯が友達に頼み込んで美しく変身して娘のふりをして侍る場面があるのですが唯は恋愛初心者なので全てを預ける決意がまだできません。
そんな唯に、若君は優しく、話し相手をしてくれます。ふとした時に見せる流し目とか、唯の天真爛漫な姿に明るく笑って見せたり(本来はあまり笑わない様です)ゆったり待つけど逃がさない感じに大人の男の魅力を感じます。
唯は、頭が真っ白になったり赤面したり青くなったりと忙しいです(笑)
少女漫画なので、Hなシーンはないのですがそれを凌ぐときめきがあると思います。
そんな一つ一つの出来事が2人の距離をより親密にしていき、若も唯のまっすぐな性根の優しさや勇気、人柄に触れ惹かれていくのです。
封権的な社会背景の中で、心からの情熱でものを言い、その情熱のままに行動する若い2人は何かとても美しいものを思い起こさせてくれます。
普通の歴史だと、羽木家が戦に負け若君が死んでしまうと現代に戻った時に知って弟を半分拝み(脅し?)たおして再度過去へと舞い戻る唯は、お助けグッズを弟に持たせてもらいます。
遠くの敵に投影機でスポーツ観戦席の群像を見せて追い返したり、一定の距離にスモークを起こして味方1名が可視スコープをつけてまんまと逃げ道を先導したりと大活躍します。持つべきはよくできた弟です。
弟が2回目に過去に行こうとする姉に必ず帰ってきてねと約束をするのですが、唯は忠清の為に過去に残る決意をしていました。でも、唯は忠清に優しい嘘でだまされて危険が及ぶ前に現在に帰されてしまいます。
何とか過去に戻って二人は再会できるので本当に良かったとホッとしてしまいます。
帰ってきた唯に対して初めは忠清は怒っていたのですが、それは唯が危険になることを知っていたからだったんです。
唯が若君を全身全霊で守ろうとすれば、若君が同じ様に体ごと心ごと守ってくれる。切なく時に苦しく、甘い純愛を読む人は共に感じる事と思います。