話は獣の国の王子王女が登場する学園ものです。登場人物すべてが獣耳としっぽが生えています。
物語も後半に入っている巻になるので話も完結に向かって動いているところです。
登場する人物たちの恋愛模様が決まってきています。
主人公となる呉羽も黒ヒョウ国の王子・右京との恋が成就したところです。
学校でも人気の高い右京と付き合う事になった呉羽は他の獣たちの嫉妬を覚悟しながら高校生活最後の年を楽しもうとします。
生徒会の会長を務めている呉羽は学園祭をまとめながら同じ生徒会の仲間たちと笑って過ごしています。
同じ生徒会のオオカミ国の姫・蝶々は右京の事が好きだったのですがその恋に終止符を打って、ずっと傍で恋を見守ってくれていたトラ国の王子・茅への想いを自覚します。
茅は友達の延長戦で蝶々を見ているだけだと分かっているのに、蝶々は自分を見てほしいと思ってアピールをします。
最初は同じ失恋組だからと安心していただけだけなのにその思いは膨らむばかり。
茅も呉羽に思いを寄せていて、その呉羽が右京と付き合う事になったので当然失恋決定です。
最後の学園祭で蝶々と茅は生徒会の仕事をサボって遊びまわります。
その間呉羽と右京は必死に仕事をしているわけですが、忙しい中にも二人は楽しんでいるのでそこはほっこりできます。
そしてサボっている茅と蝶々は最後の夜に二人っきりで話をします。
獣であっても普通の人間と同じように恋をして可愛い反応を見せてくれるので応援したくなります。
主人公たちはうまく恋愛が成就しても他のキャラたちはどうか分からないという中で大好きなキャラであるこの二人の恋の行方が成就するのは嬉しい事です。
この11巻ではハッキリと恋人になったわけではありませんがお互いが思いを寄せ合っているのだと分かるとそれだけで満足できる結果です。
何よりこの巻でよっしゃ、と思えるシーンは略奪の王道ともいえる奪うシーンがある事です。
結納の場で結納相手とは結婚できないと言う蝶々の手を取ってその場から逃げ出してしまう一場面はよくやった、と拍手を送りたくなります。
こういう場面を見ると奪った側はいいけど残された側はどうなるのだろう、と思ってしまいますが幸せになってほしい二人を応援する方が勝るほどに純愛で美しいと思えるから納得の一場面です。
今まで親の言うとおり、敷かれたレールの上を黙って歩いていた蝶々の反抗は本当に恰好よくて、その気持ちを理解して奪った茅の勇気と優しさに感動します。
11巻の好きなシーンはここですが、もう一か所右京の兄である黄苑の結婚式も忘れられない場面です。
今までいがみ合っていた兄弟が共に歩み寄って本当の兄弟となる事ができる大事なワンシーンです。
殺されそうになった事もある相手から、名前も呼んでもらった事がない相手から歓迎され名前を呼んでもらえるシーンは涙を誘います。
感情がグッと入り込んで胸が痛くなるほどに感動できる、そんな内容となっています。