斉木久美子さんの連載作品「かげきしょうじょ!!」の最新話が読めるMELODYは、偶数月28日に発売です
同時配信の電子版が便利でオススメ!
もくじ
52話 16巻 メロディ 2024年12月号
出版社 白泉社/2024年10月28日 発売
まほろ駅前多田便利軒 / 1巻 -今だけ無料-
2022年9月8日まで
『行天春彦は 都立まほろ高校に通っていた頃の同級生だった』
『3年間 同じクラスだったが 口をきいたことはなかった』
『というよりも 行天と仲のいい奴なんて 誰もいなかった 行天が言葉を発さなかったからだ』
『でも 一度だけ』
「痛い」
『一度だけ 行天の声を聞いたことがある』
『年の瀬も押し迫った ある日の夕方 曽根田のばあちゃんは言った』
「あんたは きっと 来年は忙しくなる」
「商売が繁盛するのかな」
「商売は今年と変わらない あんたは自分のことで忙しくなるんだよ」
「もしかしたら あの嫁と別れることになるのかねえ」
(オレなら とっくに別れてるぞ)
「あとは まあ 旅をしたり 泣いたり 笑ったりさ」
「旅? どこへだろう」
「とてもとても遠い場所 自分の心の中ぐらい遠い」
『ばあちゃんは 医者から「お化けは曽根田さんの心が見せているものなんですよ」と言われて以来 自分の心を あまり信用していない』
『外国ぐらいに遠くて 言葉の通じない場所だと思ってる』
「やあ キクさんの予言だ」
「…とにかく あんたは忙しくなって」
「もう 私のところには あんまり来てくれなくなるだろうねえ…」
「…そんなことないよ 母さん」
『「また来る」とは 自分の一存では言えなかった』
「曽根田さん いい息子さんでよかったわねえ また お見舞いに来てもらったの?」
『本当にいい息子なら 年老いた母親を病院に放り込んだまま正月を迎えたりしないし 赤の他人に代理で母親の見舞いをさせたりしない』
「…じゃあね 母さん よいお年を」
「うん」
『でも 赤の他人だからこそ のんきに綺麗事が言えるのだ』
〔曽根田工務店です〕
「便利屋の多田です 正敏さんはいらっしゃいますか」
〔外に出てますけど… お見舞い 終わったの?〕
「はい 今」
〔いつもご苦労さま 主人には伝えておきます〕
ブツッ
「…おたく 来年 離婚するかもしれませんよー」
〔ツ―― ツ――〕
「気をつけた方がいいですよ――」
〔ツ―― ツ――〕
「…まあ いいか」
『ばあちゃんの言葉は予言じゃない 単なる愚痴だ』
(旅ったって どこへ行くっていうんだ)
『どこへも行かない』
(明日は 門松の取り付けと大掃除か…)
『ただ 帰るだけだ』
『まほろ市へ――』
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