花のみぞ知る、最終話 完結3巻 感想
※ネタバレ注意です※
ほっこりとするような優しく包み込むような温かさは、最後までずっと漫画の中に漂っていました。
最終話に至るまで御崎と有川の心の距離は少しずつ進んでいき、最終的に綺麗に収まったな、というのが印象的です。
物語はふわふわとしていて、ぐっと苦しめるものが何もありません。
男同士だからこその、やり取りであったり切なさであったり、それらを乗り越えての御崎の笑顔がとても印象的でした。
花のみぞ知る、の物語の主軸となった有川と御崎がとても魅力的だったので、彼らの良い意味での変化が可愛らしかったです。
有川は明るくてしっかりしていて、とても頭が良いです。なので友達も多いですし、容量がよく女性にもモテます。実際、途中の巻で彼女がいることを記述されていました。
そうは言いつつも、彼はどこか淡白で冷めた部分があり、あまり情熱的な性格ではないようでした。
しかし最終話ではそんな性格を全て取り除いたように、御崎に心を許していました。
好きで好きで仕方がない、というようにストレートに愛を伝えていますし、それが彼の裏のない性格も相まってとても可愛らしかったです。
彼の心の広さもまた魅力の一つです。
御崎と初めての夜を過ごし、より2人の絆は深まっていったような気がしました。
そしてもう1人の魅力的な登場人物が、御崎です。題名にあるように、まるで花のような男の子です。とにかく綺麗でとても華があります。
無口でクールな雰囲気なのかと思いきや、その中身は天然でドジな部分があり、照れ屋で可愛らしいです。
彼は元からの同性愛者という事もあり、それが最終話に至るまで尾を引いているように見えました。
「どうして自分は男なのだろう」という疑問がずっと彼の中に残っていたのだと思います。
たしかに御崎が女の子だったら、こんなにも悩んだり苦しんだりする事はなかったでしょう。
御崎のずっと昔から抱えてきた苦しみを取り除いたのは、有川の存在でした。
御崎はそのままで良いんだよ、という風に言われた事で、彼の中の苦しみが浄化されていきました。
その流れがとても綺麗で素晴らしかったです。
物語の流れは非常にゆっくりです。突然どちらかがハメを外す、または差し迫ったりしません。
御崎を抱きしめる時の有川の繊細さ、本当に大切なのだなとわかる優しさと愛しさが指の細部にまで滲み出ていました。
作者である宝井理人さんの絵は、とても描写が美しいです。
特に御崎の表情の変化はとても凝っていて、眉毛の曲げ具合から頰の赤み具合まで計算されているように思います。
有川のストレートな告白に対する反応、最終話でキスした後に恥じらいを見せる顔。
どちらも同じように見えて、意地がまさって顔を赤くしたり、素直にとろけたような顔をしたり、本当に存在しているような躍動感があります。
なかなか素直になれない。本当の自分を受け入れられない。そんな御崎は、最後の最後で心からの笑顔を見せます。
まるで花が開くような、咲き綻ぶかのような優しい笑顔でした。
花のみぞ知る、という題名の通り、触れることさえも臆病な相手を、優しく包み込むような物語でした。
男同士、という障壁が必ず重々しくなかなか割り切れずに苦しんでいく。御崎の表情の変化や涙を見ていればよく分かります。
じん、と目元が熱くなって共感さえも覚えるのです。
有川のまっすぐさは最終話にいたるまで全く変わりませんでした。
好きであることを隠す必要はない、こんなにも幸せだと思えるのなら、それは悪いことじゃない。有川の言葉がとても印象的でした。
彼らしく、とても前向きな言葉だと思います。この言葉で御崎も救われたと思います。
全体的にとてもまとまりがあって綺麗な物語でした。