ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章、最終話 完結21巻 感想
※ネタバレ注意です※
「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」は、ドラゴンクエスト1・2・3のロトシリーズをベースとした物語です。
主人公のアルスが、古代からよみがえった魔神「異魔神」を倒すべく、三人の聖戦士ケンオウ(剣王・拳王・賢王)や仲間たちとともに冒険を繰り広げます。
最終話「奇跡」は、いよいよ異魔神を討ち果たす場面が描かれます。
これまでも、規格外の強さを見せつけてきた異魔神。
お話の冒頭、聖戦士の3人が協力して、絶大な攻撃魔法「マダンテ」を放ちます。
命を懸けて危険な呪文を放ち、笑顔で散っていく三人に、まずは涙腺が崩壊します。
ちなみに、ロトの紋章ではリアルタイムで時間が流れているので、少年・少女たちの成長が見られます。
そのため、最後の三人の意思や覚悟に、初登場シーンを思い出し、「あんなにやんちゃだったのに、こんなに大きくなっていたなんて」と感無量となるのです。
ところが、異魔神にダメージを負わせたものの、致命傷とはなりませんでした。
異魔神は規格外の魔法を放ち、応援に駆け付けていた世界中の戦士たちを蹴散らしてしまいます。
とうとうアルスも満身創痍に。
生き残った戦士たちが回復呪文を送り続けることで傷を癒したアルスは、皆の魔法力を集める魔法「ミナデイン」を放つことを宣言します。
始めは馬鹿にしていた異魔神ですが、みるみるうちに集まる魔法力に青ざめていくことに。
なんと、そのミナデインは、世界中の多くの人たちの力が合わさっていたのです。
そしてついに、異魔神を討ち果たします。
最後は皆で協力するミナデインが切り札になるだろうと予想しつつも、やっぱり世界中の人々の想いが集まるところは感動させられます。
しかも、この世界中の人たちは、当時、ロトの紋章が掲載されていた少年ガンガンにて読者投稿されたキャラクター達なのです。
当時の子どもたちの夢や想いが詰まった最終回だと思うと、さらに感慨深いものとなります。
かなりの数のキャラクターたちが細かく描かれているので、それらを描いた作者さんやアシスタントさんたちの労力や、一人でも多くのキャラクターを登場させてあげたいという想いにも感動します。
そして、その仕事ぶりに、なんてかっこいい大人たちなのだと刺激をもらうのです。
ちなみに異魔神は、古代に栄えた文明で人工的に作られた肉体に、魔王の魂を召喚して作られた、半人工生命体です。
発達しすぎたテクノロジーが生み出した負の部分に、人の絆や想いが勝つという構図も見て取れます。
そこから、本当に大切なものは何なのだろうということも考えさせられます。
ラスト、命を象徴する世界樹が復活し、戦いで傷ついた人たちが回復、立ち上がるところが描かれますが、ここからはセリフがなくなります。
それぞれの場面を切り取るように展開され、登場人物たちがその後どのように過ごしていくのかがイラストで断片的に示されるのです。
しかも場面ごとにスタッフたちの名前が記されており、エンドロール感満載です。
この原作のドラゴンクエストのエンディングを意識したラストに、ゲームのファンとしては、かなりワクワクします。
一つのゲームをクリアしたみたいに感じられる演出に、グッとこみ上げるものがあります。
それに、その後こうなるのではないかという想像の種を与えつつ、あまり語りすぎないのもセンスを感じます。
想像する余地をたっぷりと与えてくれることで、最終回が終わった後も自分だけの物語を楽しむことができるのです。
長い冒険の最終地点である最終回ですが、これ以上のラストはないように思います。
ストーリーの落としどころはもちろん、最後の終わらせ方も満足のいく最終回となっています。
物語の可能性を広げるこの最終回は、私の好きな最終回の一つです。