失恋ショコラティエ、最終話 完結9巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話は主人公爽太のモノローグから始まります。
同僚で親友のオリヴィエと妹のまつりの結婚式の準備が着々と進んでいく中、サエコと薫子はお互いの近況について語り合います。
家出から戻り旦那と和解したサエコでしたが、「今は優しいけどその内モードチェンジするでしょ」と達観した様子でした。
家出中に爽太と過ごした思い出が、旦那の悪い面にどう対応していいか分からず逃げ出してしまったサエコを支えて逞しくしたと感じました。
他の人に好かれることを第一に考えることで可愛く愛される自分でいたサエコが「自分さえしっかりしていればどうやってでも生きていける」「自分のやりたいと思ったことをとことんやりたい」と笑顔で言ったシーンからも彼女の心境の変化が見られます。
一方男性に対して不満ばかり抱えていた薫子も、自分が壊してしまった爽太とエレナの関係を復活させるための手助けをしたことで「（男性に褒められるようになるかはともかくとして）自分をよくやったと褒められるように生きていこうと思った」と言います。
作品内でネガティブ全開だった薫子が自分のことを肯定して、これからも肯定できるように生きていきたいと宣言できたことは彼女自身の対人関係に関する考えが変わったと感じました。
その年のクリスマス、バレンタインも爽太の勤めるショコラヴィは大人っぽくシックにまとめたチョコレートケーキやジンジャーなど暖まりそうなチョコレートを詰めたギフトが飛ぶように売れ、あっさり去年の売り上げを更新し大盛況でした。
爽太とエレナは以前のようにまでとはいかなくてもまた二人で仲良く励まし合い毎日を過ごしています。
モデルの経験を活かしてネイリストになりたいと言っていたエレナはフードコーディネーターの資格の勉強も始めていました。
爽太はエレナが結婚も視野に入れて勉強してくれていると微笑ましい気持ちになると同時に、冗談で結婚を言える時期は終わっているとも考えていました。
計算を尽くしてサエコと結ばれても彼女の気持ちを信じ切れずに苦しんでいた爽太がエレナに対しては、「大事にしようと思う。俺の一番みっともない恋と一番ひとでなしな姿を見届けて受け入れてくれた人だから」と穏やかで優しい気持ちを持ちます。
爽太とエレナには結ばれてほしかったのでまた二人が穏やかな日々を送れるようになったのはすごく嬉しかったです。
作中で薫子が「人間必要とする相手に自然と手が届く」と言っていたので爽太にとってはそれがエレナだったのではないかと思いました。
まつりの大学卒業を待ってオリヴィエとまつりの結婚式が開かれました。
見開きで幸せそうな二人の姿が描かれています。
そこで爽太は自分の家族にエレナを紹介していて、薫子もそれを笑顔で見守ります。
結婚式後は薫子と関谷、関谷とリクドーのその後についても描かれています。
ある日一人でショコラヴィに立つ爽太はこれまでの日々を振り返ります。
サエコがチョコを好きでなければショコラティエにはならず、オリヴィエやリクドー、エレナに出会うこともありませんでした。
店頭に並ぶチョコレートもサエコの要望や喜ぶ顔を想像して作ったもので言い換えれば全部サエコがもたらしてくれたものだと考えます。
来月からオンライン販売が始まり、二号店の話が本格的に動き出しているショコラヴィですがそれも全てサエコがいたからであり、これからもサエコに失恋をし続けていたいと泣いているシーンで物語は締められました。
登場人物たちが駆け引きをしたり、葛藤したりしながらも最後には自分も相手も好きになって前を向いていく姿が描かれていて最終話らしい話の展開になっていました。
好きな人に描ける情熱は人生を変えてくれたりもするし、恋が実らなくても得られるものは多いということを教えてくれる話でした。
