摩利と新吾 ヴェッテンベルク・バンカランゲン、最終話 完結13巻 感想
※ネタバレ注意です※
摩利と新吾、最終話LARGO2は時代が大正にはいり、新吾が留学先のヨーロッパから、摩利を残して帰国するところから始まります。
一人異国の地に残るなったのですが、摩利にも自分の使命があり、新吾と一緒に本当に帰国したかったはずなのですが、残る事を決めました。
摩利も大人になったなと感心しました。
一方新吾は久しぶりの日本で、大歓迎を受けます。
待っていたのは家族や元持堂院高校の愛すべき全猛者連の面々です。
新吾もここに摩利がいたらなあと思うことしきりです。
2人は固い友情で結ばれているという事になっていますが、実は、新吾の気持ちは本当にまぎれもない友情なのですが、摩利の気持ちはそうではないのです。
摩利の新吾に対する気持ちは、ズバリ恋愛感情です。
かつてはこのことを知ってしまいとても悩んでしまう新吾なのですが、最終話では摩利の気持ちを認め、その気持ちに自分は友情という形で答えていこうとする新吾の心の変化がうまく描かれていて、とても感動しました。
このような恋愛といえず、さりとて友情とも言い切れない、人と人との付き合い方もあるのだと、深く考えさせられました。
また、男同士での恋愛がらみの話だとちょっと怪しい感じがしてしまい、引いてしまう事もありますが、このお話では、素晴らしい人と人との絆として描かれています。
そこが摩利と新吾、このお話の一番特筆すべき所ではないでしょうか。
また持堂院高校の全猛者連の、いつものメンバーとの友情、そしてその各々のメンバーの生き方も実に興味深く描かれています。
最終話では、各々の向かう道、また向かった道も描かれています。その中の一人、なんといってもりっぱな家柄、そして人格者でもある夢殿先輩、実はこの人もひそかに摩利に恋愛感情を抱いているのですが、決してそれを押し付けることなく、政治家の道を目指していきます。
その他にも映画監督になった留、銀行員となり、摩利をあきらめた姫花を結婚する桃太郎先輩。
みんなそれぞれの道を進んでいきます。
そんな中で関東大震災が起きます。摩利は新吾を心配するあまり、眠ることも食べることも出来なくなります。
情報網が発達していない時代で消息も何も分からないのですから、どんなに心配だったろうと思います。
しかし無事2人は再会を果たし、とても喜びます。しかし一方でとても悲しい事が起きてしまいます。
いつもマイペースでひょうひょうとしているのですが、とても大事にな場面で摩利や新吾の支えになってくれた、紫乃先輩が亡くなります。
彼はひそかに愛していた腹違いの姉の、子供をかばって建物の下敷きのなり、亡くなるのでした。
とても悲しい出来事ですが、彼にとってはこれが本望だったのだと思います。
自分の命より愛する姉、そしてその子供が大切だったと思います。
その直後、新吾は自身の結婚の話を摩利にします。
そして摩利には生まれ変わっても俺にはおまえが必要なんだ、と告白します。
それが友情という事が分かっている摩利ですが、相手の事を思い、自分の恋愛感情は一生抑えようと新吾を祝福します。
そして、第二次世界大戦という恐ろしい出来事が日本を襲います。
そしてその後、戦後の学制改革で持堂院高校はなくなる事になりました。
懐かしい学び舎にかつての全猛者連が集まります。
しかし残念ながらその中でも何人かが、戦争で命を落としているのでした。
やはり先の第二次世界大戦というのがどんなに悲惨な戦争かというのが改めて分かりました。
摩利と新吾もこの戦争で命を落としました。
2人はなぜか同じ日の同じほぼ同じ時間に無くなるのです。
ここに2人の決して揺るがない絆を感じました。
手を取り合って天に2人は上っていきます。
そこには先に来ていた紫乃先輩や戦争で死んだ仲間たちが待っているのでした。
きっとそこでもまた全猛者連を結成しているのかもしれません。
残ったメンバー他達もなくなった各々を悼みながら、いずれ天国で会う事を誓います。
楽しかった時代は過ぎてしまいましたが、きっと今は元全猛者連の面々が、また向こうの世界で活躍しているに違いないと思います。