クレムリン、最終話 完結7巻 感想
※ネタバレ注意です※
コラムニストとしても大活躍のカレー沢薫先生ですが、どっこい本業は漫画家さんです。
そんなカレー沢先生のデビュー作にして、初連載作品の「クレムリン」。
シュールな、猫ちゃんギャグ漫画です。
打ち切られたのに、なぜか続くという快挙を成し遂げましたが、惜しまれつつ7巻で完結しました。
そんな最終回は、なんと驚きの展開。
喋って働く二足歩行の猫、関羽たち(三匹とも同じ名前)。
ちなみにロシアンブルー。
しょうもない飼い主の青年「キャッツ」(あだ名)を関羽たちは支え、励まし、時に甘やかしながら、お尻を叩いてきました。
むしろ猫三匹が働いて飼い主を養うという、逆転主従が基本設定なのですが……。
最終回では、なんと関羽たちが普通の猫になってしまうのです。
見た目はいつも通りだけど、喋らず、カレーも食べず、言葉も喋らない。
大好物のカレーに目もくれず、キャットフードを食べる三匹。
サッカーに恨みを持つキャッツが「サッカーは許さん」とボールを破壊しても、サッカー好きの関羽は無反応です。
いつもは泣いたり怒ったり、動転して飛び出すのに……。
そのうち、ニャーニャー言いながら外に出た関羽たち。
キャッツは部屋で帰りを待ちますが、いつまで待っても関羽は帰って来ません。
すっかり日が暮れた中、外に出たキャッツは関羽の名前を呼びます。
でも、反応が無くて……。
「な、な、な、なに?これはどういうこと!?」と、ドキドキしながら読んでいると……なんとそれは、眠っているキャッツが見た夢の内容でした。
つまり、いわゆる夢オチ。
目を覚ますと、いつも通り二足歩行の関羽たちが「キャッツ、起きるニャ」「朝だニャ」と、朝ご飯を手に飼い主を見下ろしていました。
「お前らが普通の猫になってしまう夢をみた」という飼い主に、「僕らはずっと普通の猫だニャー」と返す関羽たち。
いや、普通の猫は喋らないし、二本足で歩かないし、カレーも食べないよ!!
と突っ込みながらも、いつも通りの日常があることにホッとしました。
やっぱり、クレムリンはこうじゃないとね。
キャッツ青年は一話まるまる、いつものジャージとニット帽姿だし……(寝る時も帽子を被っているのでしょうか……)。
ちなみにその後、「会社に行こうニャ」と飼い猫に言われたキャッツは「断る!」と布団をかぶり、二度寝をキメます。
「キャッツは僕らがいないとダメだニャー」と言いながら、布団ごと飼い主を引っ張って出社する関羽たち。
これからも変わらない毎日が、ずっと続いていくのでしょう。
打ち切りを回避する為に、大学生のキャッツがいきなり大手化粧品会社『資猫堂』に入社したり、ライバルの『ジョブズ山』と熾烈な戦いを繰り広げたり……。
色々迷走したシリーズですが、最終回は原点回帰とも言える、ユル~い内容でした。
クレムリン終了後も、いまだにファンに根強く愛される関羽たち。
『東京都写真美術館』の宣伝広報漫画『ニァイズ』でも、キャッツと関羽たちの活躍は続いていますが……。
『クレムリン』としての連載は、ここで終了と相なりました。
ややこしいのですが、実は7巻には最終回が二回掲載されています。
この漫画、『モーニング』と『モーニング・ツー』という二つの雑誌で連載していたので……。
最初に終わった『モーニング・ツー』の最終回。
そして前述の最終回が、本当にシリーズ最後の『モーニング』本誌に掲載された、真・最終回です。
いやはや、その型破りなところが、またクレムリンらしいというか……。
あとがき漫画で、関羽たちも「念入りに終わったニャー」「どんどん感動が薄れるニャ」と、冷静に分析していました。
健気で可愛くて、世話焼きな関羽たち。
連載が終わっても、意外とあちこちで活躍している彼らを、これからも応援していきます。