スラムダンク、最終話 完結31巻 感想
※ネタバレ注意です※
最終話は全国大会での2回戦山王戦にて主人公桜木花道がつかんだワンスローのチャンスを、ゴリこと赤木君が決めるシーンから始まります。
この時花道は背中を負傷しており、もう一度コートに戻ることは今後の選手生命を危うくさせる行為なのですが、ダンコたる決意のもと安西監督やチームメイトの制止を振り切りもう一度コートに戻ります。
この作品には名言が沢山出てくるのですが、この時の安西監督と花道のやり取りが何度読み返してもグッとくるものがあります。
「オヤジの栄光時代はいつだよ?俺は今なんだよ!」というセリフなのですが、これはもう誰に何を言われようと動じない花道の芯の強さを感じさせてくれますし、それはそのあとの桜木軍団の反応を見ても分かります。
その花道を唯一動かす事の出来る人物、流川楓。この人物の「どうあほう」の一言が花道の負けん気をもっと強くさせます。
最終巻は湘北高校バスケ部(主にスタメンメンバー)全員に見せ場があり、今までのストーリーはこの最終巻の為の布石ではないのだろうかと思うほどそれが伝わってきます。
最終巻に関わらず登場人物全てに思い入れがあるのですが、この巻では湘北高校スターティングメンバーや安西監督の今までのストーリーが一人ひとりワンシーンずつ表現されています。
指導者として交代させようとはするものの、良いプレーを見ていたかった安西監督。低身長で相手チームになめられながらも絶妙なパス回しをしたリョータ、体力の限界に達し、ふらふら状態でも勝ちにこだわりプッシングワンスローを取った炎の男ミッチー、自分は河田(兄)より劣るがチームは負けないと最後に必殺ハエ叩きを決めてくれたゴリ、そして最強問題児一年生コンビ花道とルカワ。
背中を負傷している中、この最終巻でバスケットを始めてから初めて花道が流川にパスを出し、それを決める流川。
この段階で試合時間残り2分41秒なのですが、この段階から、なんと24ページ分にわたり、このSLAMDUNK最終巻はキャラクターたちのセリフは一切なくなり、全て絵のみで時間の経過や試合の流れや人物の感情の動きが表現されます。
緊張感が絵から伝わってきて、本当に試合会場にいるように感じるくらいすごい臨場感です。
そしてセリフなし25ページ目で花道の「左手はそえるだけ...」というセリフが出てきたと同時に、試合残り時間2秒の段階で流川もまた初めて花道にパスを出し、花道がゴールを決めたところで試合終了し最強山王に勝利するという流れなのですが、この時の花道と流川のハイタッチするシーンがドドーンと大きく描かれているのがすごく印象的です。
最後は3回戦であっけなく負けてしまい優勝は逃すのですが、それがまたスラムダンクファンの想像力を掻き立てる構成になっていると思います。
花道はこの後いつ戻ってくるのかなぁ、最後に出てくる飛行機には沢北君が乗っているのかなぁ、そして結局全国優勝したチームはどこだったのかなぁ...おそらくあの高校ではないのかなぁ...??
などなど本当に色々な想像力の種を残してこの最終巻は終了するのですが、私はこの作品を小学生のころから読んでいて、大人になった今でも時折出しては読み返しているのですが、最終巻は読み返す頻度がおそらく最も高いと思います(笑)。
それでもいまだに想像が膨らみます。
最終巻を読んで、○巻を復習の為読み返すといった具合です。最終巻の表紙を見るとアニメのテーマ曲が勝手に頭の中で再生されるほど読み込んでいます。
これはおそらく先に述べた24ページ分のセリフなしという表現の仕方が、この作品を”読む”というより”感じる”にさせているのだと思います。
それくらいあの表現は素晴らしいものだったと思います。