わたしのお嫁くん　最終回 / 結末

◇１巻 まるまる 無料◇ほぼ毎日 更新◇

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「可愛い…」

『“推し”』

『それはこの世で最も尊い人』

『もし』

「こっち見て？」

『そんな“推し”が』

『ある日突然　　あなたの世界に降臨したら』

『どうしますか？』

「おーい常田」

「こないだのミーティング資料 直しはどうだ？」

「あ もうできてます！」

「さすが常田 仕事早くて助かるよ　　みんなに見習って欲しいよ」

「とんでもないです」

「何 今の見習って欲しいとか 嫌味？」

「ね 聞いた？ 常田さんの元カレ」

「聞いた聞いた 営業部のエースの近藤さんでしょ？」

「最近秘書課の佐々木さんと婚約したっていう 近藤さんね」

「絶対 二股されてたやつじゃない　　なんなら 常田さん浮気相手だった説」

「佐々木さんと常田さんじゃ勝負にならないじゃん 可哀想～」

「佐々木さん 24でしょ？　　29のアラサーじゃ太刀打ちできないよね」

「常田さんって仕事できるけどさ…」

「女として勝負できないから　　仕事に逃げてるだけだよね」

「本当 それな！」

「私そんな女に なりたくなーい」

「うちらは見習わないようにしよ」

「あ～もう！　　全部 聞こえてるよー！」

「知ってる…」

「私には何もない」

『常田紗耶香29歳　　どんなに崖っぷちでも 私は大丈夫』

『私にはこんなクソみたいな世界を生きるための』

「よし…」

『精神安定剤がいてくれるから』

『陸様』

『私の天使』

『陸様は まだメジャーデビュー前のアイドルグループの一人』

『私は元々アイドルに全然興味がなくて 陸様を初めて見たのもドラマのチョイ役だった』

『その頃の私は 憧れて入った広告業界で』

『周りの華やかさに圧倒されていつも下を向いていた』

『だから』

『あんなに心が動いたのは久しぶりだった』

『ちょっとしか出ていないのに すごく輝いてて 監督に脚本の読み込みがすごいって絶賛されてて』

『このドラマがきっかけで 同じ監督の人気シリーズに立て続けに出演した――』

『その後 グループのライブ演出も陸様がやるようになって ドームツアーも成功させた』

『アイドルだってドラマの現場でなめられて グループでも一番年下の弟分扱いされてた陸様が』

『それでも』

『“一生懸命”を やめなかった陸様が』

『どうしようもなく』

『私の心を支えてくれた』

『周りより地味でも陰口言われても 笑顔でがんばってみよう』

『陸様みたいにって』

（もし陸様だったら）

（こんな今の私みたいな状況でも）

（きっと笑顔で乗り越えちゃうんだろうな）

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