あやういトライアングル　最新話 / 15話

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『私 ミリアーナ・ダィテスには 前世の記憶があります』

『前世の私は「水谷美有」という ごく普通の女性でした』

『二十四の時に 事故で死にまして』

『転生した この世界は』

『異世界でした』

『この世界は 精霊とか魔法とかありますけど 電気や水道はない　　文化や娯楽も少ないです つらいです 退屈です』

『だから私は 前世の知識を使って この世界を発展させることにしました』

『そう』

『すべては ある野望のためなのです』

【オウミ王国内】

ガラ　ガラ ガラ‥

【ダィテス領への街道】

「なんにもねえな…　おい これで道はあってんのか？」

「……」

ガラガラ

「……ふん」

「囚人扱いかよ　　胸糞悪い」

【オウミ国「元」王太子 「戦神の寵児」 マティサ】

【マティサの臣下 「銀の守り刀」 コシス・カティラ】

「これから向かいます ダィテス領は辺境でございますので」

「ふん だだっ広い どん詰まりの辺境か」

「三方を「竜骨」と呼ばれる 険しい山脈に囲まれておりますゆえ　　隣国から攻められたことはありません」

「だが ダィテス領からも攻められねぇ　　ダィテスにいる限り 俺は武功の立てようもねえってことだ」

「政権争いに敗れた王族が辺境に追いやられたのが ダィテス領の始まりらしいな　　今の俺と同じじゃねえか」

「ざまぁねえな」

ギリッ

「我が君…」

「コシス」

「手前は俺についてこなくとも よかったんだぞ　　今の俺は 王位継承権もなけりゃ 王子ですらねえんだ」

「我が君」

「わたしは生涯 主を変えるつもりはございません」

「物好きだな」

「はい」

「――ダィテスの資料はあるか？」

「ございます」

「実は… ここ十年ほどで ダィテスは非常に変わっておりまして」

「なんだこりゃ！？」

「収益が跳ね上がってんじゃねえか！」

「税率を上げてないのに この数字か？」

「恐るべきことです　　それに 特産品の項をご覧ください」

「塩…だと？」

「ダィテスは山ン中だよな？　　ダィテスだけじゃねえ オウミには海はねえはずだが…」

「「えんこ」なるものが あるそうです　　海より濃い塩分を含み そこから塩が作れるのだとか」

「塩だけではございません」

「鉄鉱脈の発見」

「農地の拡大　　工業の発達…」

「ダィテスは ここ十年で 飛躍的に豊かになっています」

「面白ぇ… ただの辺境じゃなさそうだ　　領主のダィテス公爵は どんな人物だ？」

「グライム・ダィテス様は 奥方を早くに亡くされ 姫君が一人おられるだけです」

「この姫君は 社交界に顔を出すことはなく お姿まではわかりません」

「年は十八　　名は ミリアーナ様」

「マティサ様の奥方となられる方です」

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