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星空のカラス 全8巻 感想とご紹介

投稿日:2018年4月12日 更新日:

私が好きな少女漫画は、モリエサトシ先生作の「星空のカラス」です。
この漫画は、「花とゆめ」に掲載されていた、プロの囲碁棋士を目指す少女の物語です。
「花とゆめ」掲載の少女漫画というと恋愛要素が強い漫画がイメージとして浮かびますが、この漫画は比較的恋愛の要素が低い漫画かな、と思います。後半は恋愛要素もちょこちょこと入ってくるのですが、前半は恋愛の描写はほとんどなく、囲碁を通して成長していく主人公と、その周囲の人々の人間模様が描かれている場面が非常に多くみられます。どちらかというと、スポ根ものに近い気がします。主人公の年齢が13歳ということも、影響しているかと思いますが、手に汗を握るアツい展開が多くみられます。
絵のタッチやスクリーントーンの使われ方は、少女漫画そのものなんですけどね。女の子のキャラクターは可愛らしくて、男の子のキャラクターはかっこよくて、魅力的です。画面全体がキラキラしているというよりかは、すっきりしていて勢いがある雰囲気なので、男性にも読みやすいんじゃないかなあ、と個人的には思います。お勧めです!
囲碁が主題の漫画ですが、作中で囲碁のルールはほとんど説明されていません。しかし、私は囲碁については全くの無知なのですが、それでもすごく面白く読めました。この作品では、囲碁というものは、その人の生き様を映し出す鏡として描かれています。
私は登場人物の中でも、「八日町吟」くんというキャラクターが好きなのですが、彼の囲碁を通して描かれている生き様も、非常にアツくて素晴らしいです。
吟くんは、最初は嫌なやつとして登場します。主人公とは囲碁の大会で初めて対面をするのですが、そこで吟くんはプロになる気はないと言いつつも、「自分は強い」とやたらとアピールしてきます。実際、吟くんは囲碁がとても強く、対戦相手をボロボロに負かせるのですが、その負かせた相手に対して「アソビでやってるオレに負けて、プロ志望が情けない」等といった嫌味を言いまくるという、完全に調子に乗っている、本当に嫌なやつです。
しかしストーリーを読み進めていくと、そんな吟くんにも、事情があることが分かってきます。吟くんは親に医者になるように期待されているため、囲碁のプロにはならないのではなく「なれない」と諦めていたのです。そして吟くんは、努力で囲碁が強くなった人でした。努力で強くなった吟くんは、囲碁は「やったらやっただけ強くなる」ということを知っています。なので、自分が今後受験などで囲碁が思うように出来なくなるから、自分が強くいられるのは今だけだということを自覚していて、だからこそ相手を負かせて、自分の印象を負かせた相手に残したいと思っています。そのことが囲碁の試合で「負けたくない」という彼の思いがあふれてくる中で描かれていくのですが、その描かれ方が絶妙で切ないんですよね……!応援したくなります。
結局ストーリーが進むと、吟くんは親を説得して、の囲碁のプロ棋士を目指すことになるのですが、以前の負かせた相手への態度から周囲に嫌われてしまい、吟くんが苦労をする様子なども描かれています。でもその時も、吟くんは「自業自得」だって言うんですよね。なんてまっすぐで良い子なんだと、胸がきゅんとします。最初の登場時が嫌なやつだったため、そのギャップにやられている部分も大きいですが。(笑)
でも、そう、この漫画の中には、「本当に嫌なやつ」がいないのも、魅力のひとつだと私は思います。癖の強いキャラクターは多いのですが、どんなキャラクターにもそのキャラクターなりの思いや事情があり、それが囲碁を通して描かれています。なので、囲碁のルールが分からなくても、試合のシーンがすごく面白く読めるし、試合の行く末が気になります。そして、だいたいが胸が熱くなるような展開です。
こんなに夢中になれることがあるっていいよなあ、という憧れも抱きながら、ドキドキとしながら読める漫画です!とても面白いので、まだ読んだことのない方は、ぜひ読んでみてください。


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